「レッド・アトラス」を読んで
地図は人間が生み出した最も美しい世界の描き方のひとつである。
そう思うほど地図好きな私がこの本を手にするのに時間はかかりませんでした。
- 作者: ジョン・デイビス,アレクサンダー・J・ケント,ナショナルジオグラフィック,藤井留美
- 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
- 発売日: 2019/03/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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本書はソ連時代の地図を多数収録し、比較考察され様々な観点から地図を説明しています。
しかしながら、体系的にブレることはなく地図の情報を余すことなく示しています。
本書は冒頭にて「推理小説」を自称しています。これは、実際には推理小説ではないのですが、筆者にとって地図がまさにそのような存在であると伝えてくれます。
特に私が気に入っているのが、序文の次の一節です。
いまはGPS機能付きスマートフォンやカーナビが当たり前の時代。どの道を進めばいいか、どこで渋滞が発生し、スピード違反の取締装置がどこに設置されているか、音声で教えてくれる。もはや紙の地図は時代遅れかもしれない。
それでも歴史的な意義と、その美しさは少しも色あせないのだ。
この一節だけで筆者にとって地図とは、ただの道具ではなく、さながら美術品のような存在であることが伝わってきます。
実際に筆者であるジョン・デイビス氏らが収集した地図は、現在や近代とも異なる冷戦期に作成されたもので、建物や道路を事細かに描く緻密さと必要な事実が全体に散りばれられて記された情報量が、なにより現在のものとは明らかに違うアンティーク調の色づかいは大変美しいものばかりです。
中学生のころに地図帳や社会の資料集を読んでいた時のような、わくわくした気持ちで読むことができました。
当然ながら現実を記した地図ですので、現在発行されている地図やインターネットで活用できる地図と比べることもできます。
本書の日本語版では特別付記として、ソ連で作成された東京の地図が収録されています。 東京の当時の情景が、ロシア語という異国の言葉によって描かれているそれはミステリアスな雰囲気があり、魅了されます。
地図好き、特に西洋の地図が好きな方であればきっと気に入ると思います。
2019/04/16には、下北沢の本屋B&Bにてトークイベントも開催されます。
特定の地図について識者の方がトークする場はそうそうありませんので、ぜひとも足を運びたいところです。